えふろん-映画と本についてブログ-

ゲーム実況者のウラガワ

『π パイ』考察・感想|数字に魅入られた男の狂気とラストシーンの意味を解説

π<パイ> デジタルリマスター(字幕版)

上映時間:1時間24分

各サイトでの評価
Filmarks:
オリジナル版        ★★★3.5点
デジタルリマスター版   ★★★★3.6点

Rotten Tomatoes: 88%(批評家)、85%(観客)

面白かった点

編集が良い

音楽と映像で難しい内容をなんとか観れるようにしてくれている
という感想が本音である

A24が携わっているようで脳に響くノイズを耳に聞こえるように表現するシーンは
本当に聴いていられないくらい良い意味で気持ちの悪い音だった

頭の中のノイズの表現を音でする

天才からみたノイズは数字の羅列ではなく
日常の周囲から受けるコミュニケーションやフラストレーションであって

やはり普通の人〜賢い人くらいでは
ノイズの受け方や種類が違うんだろうと感じた

HSP(ハイセンシビリティパーソン)のような
光や音に敏感な人の感覚が他の人にはわからないものがあるんだろう

このストーリーを言語化してみる

天才数学者マックスと先人の研究者との対話より

内容としては先人の研究者が言うようにマックス自身がイカロスであり
頭痛や眩暈のような苦難に抗う姿勢を見せるものの
216桁の数字を見つけてもなお、研究を辞めなかったことから
気が触れて研修者としての命を断つことになった

プロット(円周率の流れとして)のシナリオ回収

ギリシャ神話の中の人物との対比と規則性の発見に至らなかったことにより
不完全燃焼で終わってしまうが、その完全に終えきれないという部分が
この『π』という題材を扱った根幹にあると思う

無限に続くものであり神の偉業に触れる禁忌のような意味合いもあるのだろうか
(作中に出てくるユダヤ教徒達の会話から)

つまり円周率の規則性の発見には至らず、ハッピーエンドは用意されていない
これがこの作品の素晴らしさである

マックス=壊れるパソコン

結果的に脳とパソコンの部品が負荷に耐えきれなかったことによって
研究は閉ざされてしまう
この作品においてマックスの脳=壊れてしまったCPU であって
面白い対比になっていると思った

イカロスとの対比について

両者に重なるのは忠告を聞かないことによる死の内容

イカロスは太陽で蝋が溶けて翼がなくなり落下死
・マックスは忠告を聞かずドリルでこめかみに穴を開ける

方法は違うが結果が一緒であることに関して
(解は同じになるが証明(アプローチ)が違う)

先人の研究を打ち止めにしないと破滅するという答えを認めなかったことに
よってただの比喩ではなく現実のものになってしまった

天才数学者マックスの結末

少女にいつもやらされていた算数クイズがわからなくなって
笑顔でわからないと答える男の姿は本当に幸せを手に入れたとは言い難いが
少なくとも苦しみからは解放されたように感じられた

あとから調べて知ったこと

イカロスの物語には教訓がある

傲慢さと破滅: 過度な野心や傲慢さが自己破滅を招くことを戒める
現実的な限界: 人間の能力や技術には限界があることの示唆

イカロスの物語は知っていたが教訓のようなところまでは触れていなかったため
この説明を受けてこの作品の持つ霧が少しだけ薄くなったように思える。

追記1:休めることについて(後日加筆)

作中に先人の研究者からのアドバイスで1日でもいいから休養を取れ
せめて今から風呂だけでも入ってこいと助言されていた
偉大なアイディアは風呂と散歩から出来上がるような格言もあるだけあり
どんな天才でも休みを入れないと壊れてしまうんだなぁと納得した

彼の場合自壊する道を本能的に選んでいた説もあるんじゃないかと思うけども
(円周率の規則性という禁忌に触れるような事だったため)

このブログについて

ゲームのバグやカメラのノイズが好きなゲーム実況者が書いております
筋トレが好きでベンチプレスは120㌔まで上げたことがある

現在はバカゲー実況と称するインディーゲームをうるさく実況中
収録から編集やサムネイル、一部効果音まで自作する
セルフオーダーメイドでお送りしております

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